徳島の 共建築設計事務所 の これまでのお仕事のうち特徴的なものをいくつかご紹介するページです。
こうして振り返ると二代に渡って、それぞれの時代で、設計手法も少しずつ変化していますが
その根本にあるものは 変わらず受け継いでいるように思います。
拙い写真と文章ですが 変わらぬ何かを読み取って頂ければ幸いです。

2013年2月3日日曜日

市街地の複合住宅


 
■市街地の複合住宅



1階に店舗をもつ3階建て住宅です。

この住まいの特徴は、 できるかぎり2階感覚を少なくしていること。

普通、バルコニーに頼る南側の庭を 1階から段状に持ち上げて、
 リビングルームに1階感覚を与えている。

また、この部屋は、シンプルかつ自然感覚のバランスで 緊張感を保っており、街中の喧噪はここにはない。
素材は、内外共、飽きのこないものを多用しており、 年数を経過した今も、新築当時とそう変わっていない。















広いデッキをもつ都市型住居

■広いデッキをもつ都市型住居

市街地における3階建の2世帯住居。
 
密集地のハンデイを克服し、ゆったり気分を味わい
たい。とうぜん1階の老人室にも明かりはほしい。

そこで、建物から切り離したガレージの屋上を
デッキとして使おう。

そして、その間から明かりをとろう。
 
居間から望むこのデッキは子供の遊び場・物干し場
など多目的に使われている。
 
都市においても豊かに住みたい。

ここには、そんな願いに対するひとつの回答があります。











銀色テラスの家

■銀色テラスの家
























焼杉の家


■焼杉の家

田園風景の中に建つ、現代民家。

老人介護のボランティアをしている奥様には、 お年寄りの友達も多く、遊びに訪れます。

だから、ゆったりとした部屋と、それにつづく 広いテラス、そして、6mのムク材の大テーブルも。

床は床暖房にコルク貼り。 離れの「男の部屋」は、主家とのバランス上、 重要なポイント。

外壁は周辺環境と耐久性を考えて、黒の焼き杉、 もちろん木材は、最近メーカー住宅などにはあまり使われ なくなった自然材。

ご主人の要望でもある。
多くの職人さんの協力で、手づくり感覚いっぱいの 住まいは完成した。

3ヶ月程経って、奥様から手紙をいただいた。

そこには、元気印の人たちが、生きいきと使われて いる様子が有りあり。

うれしい、瞬間である。

















□後日談 ~設計ドキュメント~


Yさん(奥様)はしゃべるより書くほうが得意である。
書いたものでのコミニュケーションは、 ややもすれば顔が
見えないために冷たくなる、 これを補ったのは、
クライアントの率直かつ、 思いを伝えようとする熱意と、
時折混ぜた、膝をつき合わせての対話だったのかもしれない。
このプロセスは、今後のひとつの可能性を示してくれたように思う。 

■Yさんからの最初の要望など(抜粋)
設計をお願いするにあたって、希望を書きましたので
参考にしていただけたらと思います。
家族構成(省略)
なぜ、家は必要なの。住むところは有るのに。
あれこれ、考えた結果、やっぱり家が欲しい。
子育て中は、本当に忙しくてバタバタ生活してきた。
平均寿命まで生きるとすれば、あと30~40年の人生がある。
その中で「今」の時間を大切にするためにも。
モデルハウス・何とか見学会、あちこち見て廻ったり、
話しを聞いたりもした、しかし、自分達が望む暮らしの
イメージに合うものは無かった。
自分達が生きてゆく家だから、わがままに作りたいが、
家づくりの知識は、ほとんどない。
(※誤解のないようつけ加えると、自分らしい家という意味
 のわがままで、結果的にはほとんどまかせていただいた)
設計事務所などにお願いするのは、一部のお金持ちの人
だろうなと、思っていた。
『家を造るにあたって、ほぼ決定していること』
・この家を売ることはなく、私達夫婦が一生住み続ける
・子供が結婚したら、一緒には暮らさない
・塀・庭などは同時にできなくてよい。

『こんな生活をしたい』
夫は のんびりと、釣りを楽しんだり鶏を飼って暮らしたい。
妻は、気楽に来てくれる人達とものづくりや、話しをする。
人が集まり「憩う」ことには夫も賛成している。

『 家の希望』
・上記の生活ができやすい
・太陽光線をうんと入れたい
・宅地の南側の畑には、木・花・野菜などを植えたい
・自動車は2台
・真冬以外は庭でバーベキューをする。エリアは夫がつくる。
・家の外に魚をさばくための水道・洗い場がほしい。
・洗濯ものは1階で干したい。  
         ・       
         ・          
         ・
・仰々しいシステムキッチンはいらない。
・夏はサウナ・冬は冷蔵庫の中は嫌。だが、かなりの、
 暑さ、寒さには耐えれる。家族全員いたって丈夫。
細かいところまでは、考えが及んでいないが、 1階部分で
私達夫婦が高齢になっても、充分暮らせる家にしたい。
以上、思いつくままに書いてみました。 よろしくお願いいたします。


■Yさんからの2回目の要望など(抜粋)

1回目の補足を書きました

建築の費用は○○○万円くらいで考えています。
これは共設計さんへの支払い、確認申請の費用、照明や
カーテンも含んで、すぐ生活できる状態まで。
ただし、登記費用・税金・植裁は別にみている。

家の大きさは、はっきりとわからない。200平方メートル
くらいかな?と、いう程度。

2 階への階段はイッキに転げ落ちないようにしたい。
娘が以前1回転して転げたことがある。

洗面所での洗髪は禁止しているが、洗う時もあるので
お湯も使えて、ちょっと大きめがよい。
洗濯機もこの部屋へ置きたい。

子供室はうんとコストを下げてもよい。
誰がどの部屋へ入るかは「くじ引き」で決める。
1室のうち、どこかでふとんが干せればよい。

高気密・高断熱と、いった家でなくてもよい。
夏は自然の風、冬はすこし多く着る。
■基本設計図を提示した際の、設計者からのメモ
・プランを考える上の、ポイントとしては構造・動線
採光などはもちろんですが、広間の空間の広がりと、
いったところに力点をおいています。

・木造がよいか、鉄骨かは、迷うところです。
木造よりも鉄骨の方が仕切壁の位置の制約が少なくなります。
しかし、鉄骨造の場合、太い柱が部屋の隅などに入ります。
もちろんどちらも長所・短所がありますので、コストの比較も
含めて、詳しくご説明します。

坪数は予定金額からすれば、かなり押さえなければなりません。
もちろん、これから決める仕上などによって変わりますが。
広間は広いのですが、これは要望でもあり、子供室を少し
小さくしてもよいかと思います。もちろん構造との関係も有ります。

このような階段のとり方・吹抜けは、床暖房をすればよい
状態になるので、是非したいですね。
詳しくはご説明いたしますが、とり合えずお送りまで。 

■(基本プランがまとまって)Yさんからの質門(抜粋)

この前、収納についての指摘を受け、考えてみましたが、
かなり、くだらないものがいっぱい有り、捨てる努力も、
必要と切実に思います。 
・夫婦室
ベットが北向きになっているのは理由がありますか。
合理的理由が有るならよいのですが。夫はどちらでもよいと。 
・納戸
タンスを置くといっていたのですが、これは寝室へ置いて
ここは、クロゼットにしようかと思っています。
・キッチン
○○メーカーに気にいってるのがあるのですが、
天板がぶ厚く、ゴチャゴチャと引出しがなくても充分
収納できそうだし、コリャー良いなと思ったが、
バカ高い・・・でも欲しい。いかがなものでしょうか!
業務用に有ればそれでもよいのですが。
食器棚はもう少し考えてみますので、時間をください。

・広間の簡単に食事をするスペース
たぶん、新聞やモノを置くうちに物置になってしまう。
それと、壁に向いてごはんは食べたくない。ここは収納でも
よいかと思っています。 
・玄関横の物置・洗面の棚・下足棚 ・2階の納戸・・・は
じっくり考えてみます。

「家をつくる」ことは、自分自身の生き方が問われている 
・・・とういうことが少し解りかけてきたような気がします。


■(設計途中)で、Yさんからの要望など
(寝室のベットの向きを変えた案を検討して)
どっちを枕にして眠るかという、どうでもよいような、
少し困った問題について、夫と話し合いましたが、当初
提案してくださった、北枕でとの結論に至りました。
扉つきクロゼットを納戸につくる理由は、特にないのですが
納戸にタンスが置けないので、納戸に変わりを置こうかと。 
子供室間の仕切壁は息子からの強い要望で、永久の壁に
して ください。材料はおまかせします。
階の納戸はふとん・掃除機・・・あとははっきりしないので
棚はおまかせします。あとはそれに合わせて考えます。

食器棚はシステムキッチンとの間が1mくらいだと開き戸でも
大丈夫だと思うのですが。 図のように中央部を扉なしの
自由スペースとして、炊飯器 コーヒメーカ オーブンレンジ
ポットなどを置こうかなと考えています。
このスペースの高さは、どのくらいがいいのでしょうね
また、ここは隠さなくても見苦しくならないように努力します。
それから、踏台なしで手がとどくのは 195cm(私)ですが
設計上、それより高いところに収納できてもかまいません。

広間の棚へ置きたいものは、テレビ パソコン画面・本体
HD ファクシミリ プリンタ ビデオデッキです。
中学生の娘が自分の部屋の収納を考えてみました。
あまり 変でなかったら、こんな感じでお願いします。

ピアノの上に楽譜などを置ける棚をつけたいのですが、
「仕方ないナ」程度だったら付けたいし、「絶対ダメ」という
くらい不自然だったら諦めるつもりです。                    
以上、ご検討ください

■完成後、Yさんからの報告
その後お変わりなく、お元気のことと思います。
3ヶ月目の住み心地を、お知らせいたします。
・床暖房 これはもう「快適」の一言。
ふだんは東1カ所しか使用しないし、時間も1時間
以内ですが、正月前後は、ほとんどつけ放しでした。
エアコンとは違った暖かさで「こんな気持ちよさなんだ」
と、改めて心地よさを実感しました。
灯油も、予想通りお金がかからないし、安い。
・苦心した「壁」
夫がなでまわすように「やっぱり、いいねえ」と、
あっちも、こっちも見て廻りました。
・広間の棚
高さで悩んだが、これでよかった。
手をのばせば、どこでもとどく。 もし、 もっと
高く していたら、台を使ってまでは利用しなかったかも。
引き出し式のパソコン台が実に使い便利がよい。
・坪庭
だだ今、雄鳥の夜間宿泊所となっている。
ベッドから坪庭を介して青空がみえます。新しい発見。
・玄関
13 センチのかまちの段差は、お年寄りも楽にあがれます。
だだ、帰る時、立ったままで履き物をはくことができません。
ちょっと低めのイスを置こうかと思っています。
・階段
ふだん、靴下だけで生活しているので、子供は平気でも、
私はすべりそうになった。コルクはよくすべるので慎重に
上り降りしている。手すりはやはり、つけようかな。
・板張りの広いデッキ
毎日ほとんど犬の寝場所。たまに息子が犬とじゃれあったり、
通りがかりの人が腰をかけたり。夏がくるのが楽しみです。
正月休みに、できあがった家を始めて見た次男坊は
「うわーつ、 すげーじゃん、これ、イイネー これ、設計の
おじさんが つくってくれんだ」と家中を歩いていた。
何も知らないまま、事務所へおじゃました時から、長いような、
アッという間のような気もしますが・・・。
なにもない所に、1件の「家」を創造する。 時には施主の
人生感にも立ち入りながら、長い時間をかけて 舵取りをする。
設計士の大変さが、ほんの少し理解できたような気がします。
ここしばらく、寒い日がつづきますが、風邪などひかれませんよう
ご自愛ください。

コンクリートミニマム


■コンクリートミニマム

郊外に建つコンクリート打ち放し住宅。

設計者であれば一度はチャレンジしてみたい?

でも これは 御施主様のたっての希望。


広間が圧巻です。

自由に使える大らかな空間、


このダイナミックなスペースに、生活の息吹が
加わって、さまざまな表情を見せるだろう。


そして喜びも、哀しみも大きく包んでくれるに違いない。


これは、家族の想念で育て上げてくれる、

そんな予感のする住まいです。  



□ 後日、木造による増築、更には 御施主様のお母様の住まい も並んで つくられました。